”なんちゃってTIVA”と"TIVA"は、似て非なるもので、全く違うものであることを説明した。TIVAをきちんと行うにはバランス麻酔の概念をきちんと理解して実践することが必要である。バランス麻酔とは鎮痛、鎮静、筋弛緩の3つの要素を個別に調節して全身麻酔を実現する方法だ。バランス麻酔とは読んで字のごとくバランスで成り立っている。筋弛緩はともかくとして、バランスの基本は鎮痛と鎮静のバランスである。アンバランス麻酔の極みは、( 鎮痛 <<<<<< 鎮静 )というもので、鎮静を極端に行うタイプである。現在のTIVAの主流はフェンタニル(鎮痛)、プロポフォール(鎮静)であるが、バランス麻酔の概念は吸入麻酔+フェンタニルという組み合わせでも実現可能である。この場合、フェンタニル(鎮痛)、吸入麻酔薬(鎮静)である。最近では、フェンタニル+プロポフォール+吸入麻酔薬という方法も存在するらしい。管理人は、プロポフォールと吸入麻酔薬を同時には投与しない(キセる麻酔とは異なる)のだが、このプロポフォール+吸入麻酔同時投与では鎮静薬の過量投与となっているのではなかろうか?つまり、鎮痛 <<<<<<<<<<< 鎮静 というアンバランス麻酔ではないだろうか。よく、大阪大学の萩平先生(BIS解析の大家)の講演によく出てくる、セボフルラン1-1.5%+フェンタニル適量という吸入麻酔+フェンタニルの組み合わせの”黄金処方”があるのだが、これに対比すると鎮痛が少なくて済むと思いこんでいるのでhなかろうか。血圧が下がれば麻酔が深い、動かなければ麻酔が深いと思いこんであるのではなかろうか?
不意に予期せぬ?手術侵襲で足下をすくわれたときには、一時的にはアンバランス麻酔は許されるかもしれないが、きちんとコントロールする(していると思っている)場面では、いかがなものであろうか。
もう一度、鎮痛、鎮静、筋弛緩のコンポーネントについてきちんと整理して考えてみよう。全身麻酔では何を指標に行うのがよいであろうか。もちろん、血圧や脈拍などのバイタルサインのコントロール、筋弛緩による不動化なども必要かもしれないが、麻酔の本質は何であろうか。20世紀の麻酔の指標をすてて、別の観点からきちんと麻酔を見直す必要があるのではないだろうか。我々、21世紀の麻酔科医(第3世代以降)は、アンバランス麻酔ではなくバランス麻酔が実践できる麻酔科医をめざすべきではないだろうか。
【参考書籍】