こんにちは、さぬちゃんです。
前回、MarkdownエディタのZettlrを紹介したところ、記事の中で「本気で使うならZotero併用も検討の価値あり」とだけ書いて逃げた部分があった。今回はそこを書きます。ZettlrとZoteroの連携、そしてEndNoteに溜め込んだ文献資産をどう合流させるか、という話。
先に登場人物を整理しておく。
| 道具 | 役割 | 値段 |
|---|---|---|
| Zettlr | 原稿を書く | 無料 |
| Zotero | 文献を管理する | 無料(クラウド容量300MBまで) |
| EndNote | 文献を管理する(既存資産) | 有料 |
つまりZoteroはEndNoteの同業者だ。「文献管理ソフトを2つ持ってどうする」と思うかもしれないが、ZettlrとEndNoteを直結するより、間にZoteroを挟んだ方が圧倒的に快適になる。その理由を書いておく。
なぜZettlrの相方はZoteroなのか
前回書いたとおり、EndNoteからBibTeX書き出しでZettlrに繋ぐことは一応できる。ただし、この方法では、文献を追加するたびに手動で書き出し直しが必要で、引用キーも RN123 という感じで今一つピンと来ない。
Zoteroには Better BibTeX という定番プラグインがあり、これが2つの問題を同時に解決する。
1.書き出しが自動になる
Better BibTeXの書き出し画面には「Keep updated(更新を維持)」というチェックボックスがある。これを入れて一度書き出せば、以後Zoteroに文献を追加・修正するたびに、書き出したファイルが勝手に最新になる。Zettlr側は何もしなくても、@ を打てば昨日PubMedで見つけた論文が補完候補に出てくる。
2.引用キーが読みやすくなる
キーが Smith2020 のような形式で自動生成される。原稿を後から読み返したとき、[@RN4821] と [@Smith2020] のどちらが自分に優しいかは言うまでもない。
設定手順(15分コース)
- zotero.org からZotero本体をインストール
- Better BibTeX のサイトから .xpi ファイルを入手し、Zoteroの ツール → プラグイン からインストール
- ライブラリを右クリック → 「ライブラリを書き出し」 → 形式は Better CSL JSON を選び、「Keep updated」にチェックを入れて保存
- Zettlrの環境設定(引用機能)で、いま保存したファイルを文献データベースに指定
これで配管工事は終わり。あとはZoteroに文献を放り込むだけで、Zettlrの補完に流れてくる。
Zoteroならではのおまけが2つ
ブラウザ拡張の Zotero Connector を入れると、PubMedや各ジャーナルのページを開いた状態でボタンを1回押すだけで、書誌情報がPDFごとZoteroに入る。EndNoteのインポートフィルタと格闘していた時代を思うと、拍子抜けするほど簡単だ。
もうひとつ、地味に医学系で効くのが撤回論文の警告。ZoteroはRetraction Watchのデータベースと照合して、ライブラリ内の論文が撤回されると赤い警告を出してくれる。引用しようとした論文が実は撤回済みだった、という事故を管理ソフト側で防いでくれるのは心強い。
全体の流れはこうなる。
PubMed →(Connectorで1クリック)→ Zotero →(Better BibTeXが自動書き出し)→ Zettlrで執筆 →(Pandoc+CSLスタイル)→ Word/PDF
EndNote→Zoteroの引っ越し
では本題の、EndNoteに溜まった資産の移し方。基本は「EndNoteからXMLで書き出し、Zoteroにインポートする」だけだ。
- 先にEndNoteライブラリのバックアップを取る(圧縮ライブラリ .enlx で保存しておく)
- EndNoteで移したい文献を選択(全件なら全選択)
- File → Export で、出力形式に XML を選んで書き出し
- Zoteroの File → インポート で、そのXMLを指定
書誌情報はこれでほぼ問題なく移る。添付PDFも、EndNoteライブラリの .Data フォルダが手元にある状態でエクスポートすれば一緒に取り込まれる(数千件あると相応に時間がかかるので、夜に仕掛けるのが吉)。
引っ越しの注意点
- グループ構造は運ばれない
EndNoteのXML書き出しは、せっかく整理したグループ分けを持っていってくれない。フォルダ構造を保ちたければ、グループごとに個別にXML書き出しして、Zotero側で対応するコレクションを作ってから順にインポートする。面倒だが一度きりの作業だ - 重複に注意
何度かに分けてインポートすると同じ文献が重複しやすい。Zoteroには「重複アイテム」ビューがあり、統合ボタンでまとめられるので、引っ越し後に一度掃除しておく - クラウド容量
Zoteroの無料同期は300MBまで。PDFを数千本同期するなら有料プラン(それでも年数十ドル)か、PDFはローカル運用と割り切るかを決めておく(管理人はローカル運用を選択→別記事に解説したい)
逆方向(Zotero→EndNote)と、共著者問題
逆にZoteroからEndNoteへ戻したいときは、Zoteroで書き出し形式に RIS を選び、EndNote側でインポートすればよい。書誌情報は問題なく往復できる。ただし添付ファイルまできれいに戻るかは環境依存の面があるので、「メタデータは往復可、PDFは片道と思っておく」くらいが安全だ。
そして現実問題として一番大きいのが共著者だ。最終稿を「Word+EndNoteで直す」文化圏の共著者がいる限り、EndNoteを完全に捨てるのは難しい。
筆者のおすすめの落とし所は次の3パターン
| パターン | 文献の親分 | 向いている人 |
|---|---|---|
| A: 現状維持 | EndNote | Markdownに興味が湧かなかった先生 |
| B: 併用 | EndNote(執筆前にXML→Zoteroへ都度輸入) | EndNote文化圏の共同研究が多い先生 |
| C: 移行 | Zotero(EndNoteは最終Word工程専用に休眠) | 筆頭・単著が多く、これから資産を作る先生 |
Bは一見よさそうだが、2つのライブラリの二重管理は必ずどこかで破綻する(経験者は語る)。長い目で見るなら、思い切ってCに寄せて、EndNoteは「共著者との最終ラウンド専用機」とするのが、精神衛生上いちばん良いと思う(個人的見解)。
まとめ
- Zettlrの文献供給役はZotero+Better BibTeXが本命。「Keep updated」で書き出しが全自動になり、引用キーも読みやすくなる
- EndNote→ZoteroはXML書き出しで引っ越せる。グループ構造だけは手作業、重複掃除も忘れずに
- 逆方向はRISで往復可。ただしPDFは過信しない
- EndNoteは捨てなくていい。役割を「最終Word工程」に限定して共存させるのが現実解
文献管理ソフトの引っ越しは、机の引っ越しと同じで、やる前が一番億劫でやってしまえば案外あっけない。連休あたりに、バックアップを取ってからいかが。