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さぬちゃんの麻酔科医生活

ECTの麻酔、点数はどう算定する? 令和8年6月改定

さぬちゃんです。

今日は精神科のmECT(修正型電気けいれん療法)の麻酔の診療報酬について、令和8年(2026年)6月改定をふまえて整理しておく。

ECTの麻酔って、プロポフォール(またはチアミラール)とスキサメトニウムでパッと数分で終わるよね。短時間だから「全身麻酔っていうより、深鎮静の鎮静料で取るのかな?」と迷う先生は意外と多い。

でも結論から言うと、何分で終わろうと、麻酔料を別に算定することはできない。ECTの麻酔にかかる費用は、ぜんぶECT本体の点数(I000)に含まれる(包括)。

点数の基本(令和8年6月改定後)

I000 精神科電気痙攣療法の点数はこのとおり。

区分 点数
1 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を行った場合 2,800点
2 1以外の場合 150点

今回の改定でのいちばん大きな変更点が、この「1」の名称。これまでの「マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔」から、「声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔」に変わった。i-gelなどの声門上器具での気道確保が、文言の上でもはっきり位置づけられた形だ(L008=全身麻酔の名称変更ともそろえた形)。

そのうえで、押さえておきたいポイントは、

  • 麻酔科標榜医が麻酔を担当すると、900点を加算(注3)
  • 包括範囲の明確化:上記の麻酔に要する費用は点数に含まれるけど、薬剤料と特定保険医療材料料は別途算定できる(プロポフォールや筋弛緩薬の薬剤費は取れる)
  • 麻酔技術料(L008など)はECTの点数に包括されていて、別には算定できない

点数表の文章を確認 💡

令和8年6月改定後のI000の通知(3)はこうなっている。

(3)声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔を伴った精神科電気痙攣療法を実施する場合は、当該麻酔に要する費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。ただし、当該麻酔に伴う薬剤料及び特定保険医療材料料は別途算定できる。また、声門上器具又は気管挿管による気道確保が適切でないと判断した場合に、声門上器具又は気管挿管を使用せずに閉鎖式・半閉鎖式等の全身麻酔を実施した場合は、本区分により算定する。

ここから読み取れるのは、2つ。

① 麻酔費用は包括。別請求はできない

深鎮静やL008として別に取るのはNG。ただし薬剤料・特定保険医療材料料は別、というのがポイント。

② 挿管しなくても、この「1」で算定できる

「声門上器具又は気管挿管」がベースの名称だけど、それらが適切でないと判断したときは、使わずに閉鎖式・半閉鎖式の全身麻酔で実施しても、ちゃんと「1」で算定できると明記されている。ECTは短時間だから、マスク換気だけで終えることも多いよね。そういうケースでも、閉鎖循環式の全身麻酔として行っていれば「1」でOK。ただ、麻酔記録に、以下の記載が必要と思います。

· 判断の根拠:なぜ気道確保器具の挿入が適切でないと判断したのか(例:開口障害、解剖学的リスクなど)
· 実施内容:声門上器具や気管挿管を使用せずに、マスク換気による閉鎖式全身麻酔を実施した旨

「声門上器具又は気管挿管による気道確保は○○のため適切でないと判断し、マスク換気による閉鎖循環式全身麻酔を実施した」といった一文の記載が望ましいです。

これは単なる事務上のルールではなく、「必要のない挿管を避けて患者の安全を優先した」という医療行為の正当性を担保する記載です。

つまり、麻酔科標榜医のmECTは「3,700点」

麻酔科標榜医が修正型ECT(mECT)の麻酔を担当する、いちばん一般的なケースだと、

2,800点 + 900点 = 3,700点(+薬剤料・材料料は別)

という計算になる。

麻酔科の立場から見ると

この3,700点、中身を見ると

  • 麻酔前診察
  • 麻酔薬、筋弛緩薬の投与
  • 気道管理
  • 覚醒確認
  • PACU相当の観察

ここまでやって3,700点。通常の全身麻酔症例とくらべると、正直かなり控えめな評価だね。

しかも精神科側から見れば、ECT本体(通電などの手技)もこの同じ点数の中に入っている。つまりI000という1つの点数を、精神科と麻酔科で分け合っている形なんだ。短時間とはいえ、全身管理をまるっと担っている麻酔科の手間を思うと、もう少し評価されてもいいのにな……というのが個人的な本音。

忘れずに:+900点には診療録の記載がいる 📝

注3の900点加算は、「麻酔科標榜医によって質の高い麻酔が提供されること」を評価するもの。算定するときは、診療録に、

  • 麻酔科標榜医の氏名
  • 麻酔前後の診察
  • 麻酔の内容

記載しておくこと。麻酔前後の診察を書いた麻酔記録や、麻酔中の麻酔記録を診療録に添付すれば、記載のかわりにできる。ここを残しておかないと、せっかくの900点が取れないことになりかねないので注意。

数分の麻酔とはいえ、全身管理を担っているのが麻酔科。ルールを正しく押さえつつ、自分たちの仕事の価値もちゃんと意識していきたい。では、また。