こんにちは、さぬちゃんです。
最終回はこれまた研修医に不評なPSV の話です。
「PSVって、患者さんが自発で呼吸してくれるから、適当でいいんでしょ?」―いえいえ、それが大きな誤解なんです。
ここを極めるかどうかで、抜管がスムーズに運ぶか、バッキング&血圧乱高下の地獄絵図になるかが決まります。最後まで気を抜かずにおつきあいください。
8. PSV(Pressure Support Ventilation)とは何か
PSVは自発呼吸を補助するモードです。前編の図④に立ち戻ってみてください。VCやPCが持つ「機械主導の整った矩形」とは異なり、PSVは患者さんの吸気努力から始まり、患者さんのリズムで終わる、人間味のある波形です。
- 患者さんがトリガを引くと、設定した吸気圧(サポート圧)でアシスト
- 吸気の終わりは、吸気流量がピーク流量の一定割合(たとえば25%)に落ちたところで切り替わる(フローサイクリング)
要するに、患者さんの吸いたいリズムに合わせて、息をラクに吸わせてあげるモードなんですね。優しい仕組みです。

図④で注目してほしいポイントは2つ。
- 流量カーブの冒頭に小さな下振れがある(患者さんの吸気努力=トリガ)
- 流量がピーク後に減衰し、約25%まで下がったところで吸気が打ち切られる(フローサイクリング)
麻酔器では「PSV Pro」や「SIMV+PS」として提供されることが多く、PSV Proはバックアップ換気がついていて、SIMV+PSはSIMVがバックアップ換気替わりになって、呼吸が止まっても安心の設計になっています。バックアップ換気とは、自発呼吸が一定時間なかった場合に強制換気を行ってくれるものです。
9. 覚醒時にPSVを使う3つの理由
① 筋弛緩の回復を見逃さない
自発呼吸のトリガがかかるということは、横隔膜や呼吸筋が働いている証拠です。TOFが戻ってきているかどうか、換気の様子そのものから読み取ることができます。
② 鎮静を浅くなってもスムーズに覚醒できる
麻酔を切ったとたんアシストなしの自発呼吸に放り出すと、呼吸仕事量が急増して患者さんが苦しがります。PSVでそっとアシストしてあげれば、交感神経の爆発や頻脈・高血圧を防ぐことができます。これが一番大きな利点かもしれません。
③ 抜管の準備体操
サポート圧を徐々に下げていけば、「この患者さんはVtをきちんと維持できるか」のリハーサルになります。PSV 5〜8 cmH₂O + PEEP 5 cmH₂Oでで呼気Vt 5 mL/kg以上、
RR <25/分、SpO₂≧95%(FiO₂≦0.4)、ETCO₂安定 を確認できれば、
抜管OKのゴーサインですね。
これに加え、TOF比≧0.9、意識レベル、嚥下・咳嗽反射、循環の安定 も
セットで判断してください。
10. PSVの具体的な設定方法(覚醒チャート)
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項目 |
目安 |
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始めるタイミング |
筋弛緩が切れてきて、自発呼吸の兆候(横隔膜の動き、ETCO₂波形の変化)が出始めたら |
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初期設定 |
PEEP 5、サポート圧(PEEP上/above PEEP)10〜15 cmH₂O |
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目標 |
呼気Vtが5〜8 mL/kgになるよう調整 |
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モニタリング |
呼気Vt、呼吸回数、ETCO₂、SpO₂ |
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ウィーニング |
サポート圧 5〜8 cmH₂O、PEEP 5 cmH₂Oで2〜3分程度様子みる |
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抜管GOサイン |
頻呼吸(>25/分)やVt低下(<5 mL/kg)がないこと |
注意点: PSV中に呼吸数が増えすぎる場合は、鎮痛が不足していたり、麻酔が浅すぎる可能性があります。覚醒後に使用する鎮痛薬やプロポフォールを少し足して整えるのが正解です。慌てて筋弛緩を追加打ちしてはいけません。原因究明が先です。
11. PSVを使ってはいけないとき
- 筋弛緩が完全に残っている(TOFカウント0など)→ 呼吸がトリガできず、アプニアアラーム地獄に!抜管に向けては、定量モニタリングでTOF比(TOF ratio)≧0.9を確認することが現在のスタンダードです。
- 上気道閉塞や喉頭痙攣のリスクが高い局面 → チューブが入っているのでPSV自体は有効ですが、自発呼吸が暴れると危険。まず深麻酔か筋弛緩で鎮める
- 肺コンプライアンスが極端に低い(ARDSでΔP>15cmH2Oなど)→ 無理にPSVにせず、ΔPを最小化した調節換気のままICUへ搬送
PSVは万能ではありません。「自発呼吸に頼れるとき」専用の道具だと覚えておいてください。
12. まとめ ── さぬちゃん流「鉄板方針」
長丁場、お疲れさまでした。最後にエッセンスをぎゅっとまとめます。
- 基本はPRVC(メーカーによってはVC-AFやPCV-VG) で、VtとΔPの両方を見張る。これがどんな手術・体位でも応用できる万能守護神
- 腹臥位食道手術+片肺換気でも、VC-AFに低容量設定+PEEP+ΔP監視で、安全かつエビデンスに基づく管理ができる。PCオンリーは無理ゲー感があるので、PRVCに慣れ親しんでおきましょう
- 覚醒時はPSVを「ただの呼吸練習」と侮るなかれ。アシスト量を段階的に落としながら、患者の呼吸ドライブと筋力を評価するツールとして使いこなしてください
- そして何より、「駆動圧(ΔP)を制する者が、肺を制す」
これさえ頭に入れておけば、明日からあなたもベンチレーターフリークです。
それでは、また。
References
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