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さぬちゃんの麻酔科医生活


ビデオ喉頭鏡の評価はVCIスコア (Video Classification of Intubation)へ

ビデオ喉頭鏡(VL)が標準装備となった現在、皆さんは挿管記録をどのように残していますか? Cormack-Lehane分類 グレード1 と書いて終わりにしていないでしょうか。

実は、VLの普及に伴い、従来の分類では表現しきれない「画面では声門が丸見えなのに、チューブが入らない」というジレンマが現場で課題となっていました。

そこで2025年末、英国麻酔科学会誌(BJA)にて新たな国際標準指標「VCIスコア (Video Classification of Intubation)」が発表されました。

なぜ今、VCIスコアなのか?

従来の直視型喉頭鏡では、「見える=入る」が概ね成立していました。しかし、ビデオ喉頭鏡(特に強弯曲型ブレード)では、カメラ越しに声門がPOGO 100%(丸見え)あっても、角度がきつくてチューブ操作が難航するケースが多々あります。

この「Look good, Do bad(視野は良好、操作は困難)」という現象を、従来のスコアでは「グレード1(良好)」としか記録できず、難易度が正しく伝わらない(天井効果)という問題がありました。

これを解決するのが、以下の3要素を組み合わせたVCIスコアです。

VCIスコアの3つの構成要素

VCIスコアは、①ブレード形状、②視野、③操作性の3つをセットで記録します。

1. Blade shape(ブレード形状)

どのタイプのビデオ喉頭鏡を使ったかを記録します。形状によって挿管のテクニックが全く異なるためです。

  • M (Macintosh):標準的なマッキントッシュ型(C-MAC, McGrath MACなど)

  • H (Hyperangulated):強弯曲型(GlideScope, McGrath X bladeなど)

  • S (Straight):ストレート型(Miller型など)

2. POGO(Percentage of Glottic Opening)(声門視認率)

View(視野)の評価には、おなじみのCormack-Lehaneではなく、POGOスコアを採用します。

  • 0%, 25%, 50%, 75%, 100% の5段階で評価

  • 【重要】 「最もよく見えた瞬間」ではなく、「実際にチューブを通そうとした瞬間(at tube delivery)」の視野を記録します。

3. Tube delivery(チューブ操作性)

ここがVCIスコアの肝です。「チューブを通すのが簡単だったか、苦労したか」を評価します。

  • E (Easy):メーカー推奨の手順通り、追加の器具なしでスムーズに入った。

  • D (Difficult):視野はあったが、ブジーの使用や外部圧迫などの追加の工夫が必要だった。

    • ※カルテには D (Bougie) のように内容を併記します。

  • F (Failed):挿管できず、デバイス変更や手技の中止に至った。

実際の記録例:違いは歴然!

例えば、「強弯曲型ブレードを使って画面では100%見えていたが、チューブが当たらずブジーを使って何とか挿管した」という症例の場合。

  • 従来の記録

    👉 「Cormack Grade 1」

    • これでは「すごく簡単な症例」に見えてしまい、次回の担当医が油断するリスクがあります

     

  • VCIスコアでの記録

    👉 「H - 100 - D (Bougie)」

    • 強弯曲型(H)を使用し、視野は完璧(100)だったが、操作はDifficult(D)でブジーが必要だった、と正確に伝わります

     

まとめ:正確な記録は、患者の安全につながる

2026年現在、VCIスコアはビデオ喉頭鏡時代の「新しい共通言語」として定着する予感がします。

「見えたかどうか」だけでなく「どう入れたか」までを記録に残すこと。それが、再挿管や将来の手術麻酔における患者さんの安全に直結します。

ぜひ明日からの臨床で、「ブレード・POGO・操作性」の3点セットを意識した記録を始めてみてはいかがでしょうか。

 

表. VCIスコア (Video Classification of Intubation)

評価項目

記号

定義・内容

判定基準・ポイント

Blade shape
 (
ブレード形状)

M

Macintosh
(
マッキントッシュ)

標準的なカーブのブレードを使用

(例: C-MAC, McGrath MAC)

H

Hyperangulated
(
強弯曲型)

屈曲が強いブレードを使用

(例: GlideScope, McGrath X blade)

S

Straight
 (
ストレート型)

直型のブレードを使用

(例: Miller型)

POGO
 (
声門視認率)

%

0, 25, 50, 75, 100
(5
段階)

「チューブを入れる瞬間」の視野
声門開口部(前交連〜披裂間切痕)が見えている割合。
※最もよく見えた時ではなく、実際の操作時の視野とする。

Tube delivery
(
チューブ操作性)

E

Easy (容易)

追加器具なし
メーカー推奨の手順通り、追加の器具や工夫なしにスムーズに挿管できた場合。

D

Difficult (困難)

追加器具あり

挿管のために追加の器具(ブジー等)や手技(外部圧迫等)が必要だった場合。

※詳細は ( ) に記録する。

F

Failed (失敗)

挿管不成功

追加処置を行っても成功せず、手技を中止・変更した場合。

※詳細は ( ) に記録する。

 

記録の記載例

カルテには3つのコードをハイフンで繋いで記載する。

  • M - 100 - E
    意味:マッキントッシュ型を使用、視野は100%良好、操作も容易だった。

  • H - 100 - D (Bougie)

    意味:強弯曲型を使用、視野は100%見えていたが、チューブが入らずジーを追加して挿管した。
    ※ビデオ喉頭鏡で頻発する「画面では見えているが入れにくい (Look good, do bad)」症例を正確に記録できる。

【参考文献】

Halliday C, et al. VCI Study Group. The Video Classification of Intubation (VCI) score for videolaryngoscopy: a multicentre international feasibility study. Br J Anaesth. 2025 Dec 11:S0007-0912(25)00802-5. doi: 10.1016/j.bja.2025.11.007.