麻酔科専門医の先は、どうする?という問いに、みなさんはどう答えるだろうか。
この問いの意味をどうとらえるかによって、その人が、資格に対してどの様に考えているかがわかる。
若い先生に話をするときに、「麻酔科専門医の先は、どうする?」と聞くことにしている。
次の資格取得が大切と考える先生は、次は●●専門医をとりますと答える。では、その先はと問うと、次は●●専門医をという答えが返ってくる。
身の振り方について問うていると思っている先生は、次は、研究や論文を頑張りますとか、指導を頑張りますとか(手術室の麻酔/ICU/ペインクリニック/緩和やもう少し細かい仕事など)をやっていきたいと考えてるいう答えが返る。
仕事内容の充実、スキルを上達させることだととらえている先生は、次は●●の管理ができる様にしますとか、次は●●に関する仕事ができるようになりたいと思いますとかいう答えである。もうすこし、デキる答えは、○○を極めたい!!と具体的に極めたいことを言うのである。
資格を取得することが悪いと言ってるのではなく、麻酔科専門医の取得をゴールだと考えている先生がいるのではないかという老婆心からである。
専門医というのはスタートであって、ゴールではない!
医師免許の取得と同じで、専門医取得もスタートであってゴールではない。
麻酔科専門医を100人並べれば100段階のレベルの違いがある!専門医というのはとった時点では同じ資格であるが、その後の磨き方でどの程度スキルが上がるか大切である(ドラクエで学ぶw)。
どの方面を伸ばしたいかは、本人の興味や経験症例などによって変わってくるのだが、先の目標なしにやっていると、同学年でもスキルにかなりの差が出てくることに気づかされる(私は気づく)。麻酔科専門医の矜持とは、時間がたっても専門医レベルを維持し続けることである。
専門医といえるレベルでない、(資格上の)麻酔科専門医ほど惨めなものはない。
麻酔科専門医のレベルとは
専門医のレベルをわかりやすく説明するために麻酔科医の仕事を手術室内での仕事に限定する。
一言で言うと「讃岐塾10ヵ条」 1) を実践できる麻酔科医である。
讃岐塾10ヵ条
①目の前の症例に対して、ベストを尽くすこと(守りには回らないこと)
②常に1つの方法だけではなく、複数の選択枝を持つこと
③自分の行っていることに自信を持つこと、その姿勢を貫くこと
④他科の医師やコメデイカルに対して絶対的な信頼を得ること
⑤患者、患者家族、外科医、メディカルスタッフに対して満足が得られるように常に努
力すること、その姿勢が見てとれること
⑥自分の専門領域の状況判断は、緊急事態以外では、すべて1人で行えること
⑦緊急事態の手に負えない症例については、躊躇せず他の医師を呼ぶことがで
きること、その判断に従えること
③新しいことには、患者の安全を確保した上で常に挑戦すること
⑨専門領域の世の動向についての勉強とスキルの維持。向上を継続すること
⑩自分の仕事についての理解が得られるよう、仕事環境を整えるために麻酔科
の仕事を広く啓蒙すること
文献
1)やさしくわかる!麻酔科研修 改訂第2版 P.280